組織培養
従来、組織培養は細胞の代謝活性を調べる方向で研究が進んでおり、その基材も軽量で取り扱い易く、各種加工が容易なポリスチレンを中心としたプラスチック製のものが広く用いられていました。近年、細胞生物の研究が進み、細胞内部を立体的且つ詳細に観察したい、もしくは細胞を生体のまま構成成分の挙動を観察したいといった要望が増えてきております。
これらの観察には、共焦点レーザー顕微鏡、あるいは蛍光顕微鏡や微分干渉顕微鏡等が用いられ、また基材には薄く表面の平坦性が優れ、しかも自発蛍光の低いガラスや石英ガラスが用いられています。尚かつ昨今は、各種の蛍光色素が開発され、感度がよく、コンピューターへの取り込みが容易な蛍光染色がよく行われるようになってきました。
共焦点レーザー顕微鏡を用いた研究
共焦点レーザー顕微鏡は、レーザー技術とコンピューター技術を組み合わせた新しいタイプの顕微鏡で、光源、顕微鏡本体、コンピューター、モニターからなります。光源から発せられたレーザー光は、第1のピンホールを通り、コンデンサーレンズで試料上に細く絞られて照射されます。次いで、試料からの光は、対物レンズで集光され、第2のピンホールを通過したもののみが検出器に結像します。
そのため、通常の光学顕微鏡で像がぼやける原因となっていた焦点面以外からの光は共焦点顕微鏡では画像化されず、焦点面のみの鮮明な画像が得られます。さらに焦点面からの光のみを検出することから、深さ方向の解像度が上がり、厚い試料や細胞を立体的に観察することが可能となりました。
細胞内カルシウムイオン分布の解析
生理現象の多くが、細胞内のカルシウムイオン(Ca2+)濃度に依存するということが判明してきており、細胞内のCa2+を解析するという研究が増えてきています。この研究には、細胞透過性のカルシウム指示薬が用いられますが、そのほとんどが蛍光による分析です。生体細胞のカルシウムイオン分布を解析するには、共焦点の蛍光画像が重要な解析手法となっております。
この目的に用いる基材としては、生体細胞を直接蛍光観察できるガラスボトムディッシュが最適です。
蛍光タンパク質の観察
目的のタンパク質遺伝子とGFP(green fl uorescent protein)遺伝子を融合させた遺伝子をHeLa細胞等にマイクロインジェクション等で細胞核に導入し、発現する融合タンパク質の挙動をGFPの蛍光で観察する方法で、本研究の基材としては、ガラスボトムディッシュが最適です。
培養細胞の蛍光抗体法
細胞が産生する抗原や抗体を感度よく短時間で検出する方法として各種蛍光色素をラベルした抗体を用い蛍光分析する方法が増えてきております。
ディッシュやマルチプレートのウェル内にカバーグラスを置き、細胞をカバーグラスに載せ、血清等の培養液を入れて培養し、培養終了後、カバーグラスをアセトン等で固定し、各種の蛍光抗体反応を行います。反応終了後カバーガラスを蛍光性の低い白板スライドグラスに試料面を内にしてグリセリン等で封入して標本を作製し、蛍光顕微鏡等で観察することができます。
この目的のカバーグラスには、滅菌処理が施され、また各種のコートが容易にでき、各種反応液に耐性のあるカルチャーカバーグラスが最適です。