テクニカルインフォメーション

剥離防止コートスライドグラス

スライドグラス表面に組織切片・細胞を接着固定できるコート処理スライドポリ-L-リジンコート(PLL)、
アミノシランコート(APS)に加え、特に剥離が発生しやすい免疫組織化学染色領域等に最適な
MASコート、MAS-GPコート、FRONTIERコートをラインナップしております。

病理・細胞診におけるパパニコロウ、HE染色、各種特殊染色免疫組織化学処理、in situ Hybridization法の過程でスライドグラス表面から組織切片(パラフィン切片、凍結切片等)・液状検体の剥離脱落を防止するために、剥離防止コートスライドグラスが広く使用されております。

従来からポリ-L-リジン(PLL)やアミノシラン(APS)をコートしたものが利用されておりますが、特性上コート表面から疎水性を有し、組織切片伸展作業時、水抜けが悪く乾燥に長時間を要することがあります。また、ガラス組織切片の間に気泡がはいり組織切片が破れることがあります。

更に免疫組織化学等の診断領域で行われる抗原賦活化処理(マイクロウェーブ処理・オートクレーブ処理等)では接着力が十分でないために組織切片・細胞の剥離が発生し、診断時問題になることがあります。

弊社ではこれらのPLLコート・APSコートの特性を考慮し親水性と剥離防止効果を向上したMASコート・MAS-GPコート・FRONTIERコートを新たに開発し、病理・細胞診検査の広範なニーズに応える製品をご提供しております。

  1. コートスライドガラスの接着原理
  2. ガラス表面の濡れ性の違いによる切片伸展性
剥離防止スライドガラスに要求される特性
  1. 細胞の表面構造について

    細胞表面は、脂質2重層中のリン脂質により負(COO-)の荷電状態にあり、ガラス表面を正電荷にすることで接着固定が可能となります。
    従来からアミノ酸であるポリ-L-リジンやアミノシランをコートすることで、ガラス表面を正の荷電状態にすることが実施されてきました。

  2. 剥離防止用スライドガラスに要求される特性
    • 各種診断目的での前処理、染色、抗原賦活化処理等でスライドガラスから組織切片が剥離・脱落しないこと。
    • 組織切片伸展作業性の良い、親水性を有するコートであること(コート表面親水性により切片伸展作業性が向上する)。
  3. スライドガラス上から組織切片・細胞の剥離が発生する主な処理過程

    各種診断目的での前処理・染色・抗原賦活化処理等でスライドガラス表面から組織切片・細胞が剥離することがあります。以下に主な処理例をあげます。

    組織切片・細胞の剥離が発生する主な処理過程
    1. 各種染色処理
    2. 抗原の賦活化処理
      • 単純加熱処理
      • マイクロウェーブ処理
      • オートクレーブ処理
    3. 酵素処理
      • プロテアーゼ処理
      • トリプシン処理
      • ペプシン処理
    4. NaOH処理
    5. HCI処理
    6. ぎ酸処理
自動免疫染色装置による剥離発生防止効果の確認
  1. 評価方法

    成ブタ乳腺組織パラフィン4μm切片貼り付け
    伸展後乾燥 60°C30分
    自動免疫染色装置
    抗原賦活処理時間60分で実施

  2. 評価結果
    • APSコート
    • FRONTIERコート
剥離防止用スライドグラスのラインナップ
  1. PLLコート
    • 塩基性アミノ酸のPoly-L-Lysineコート。
    • コート面はガラス面のOH基とイオン結合しています。
    • ガラス表面は疎水性となります。
  2. APSコート
    • アミノシランをコートすることによりガラス表面を+にチャージさせ細胞を固定します。
    • ガラス表面とアミノシランは共有結合し安定しております。
    • ガラス表面は疎水性となります。
  3. MASコート
    • アミノシランコートと比較して、アミノ基の高密度化を実現し、組織切片・細胞接着性の飛躍的向上が可能となりました。
    • ガラス表面とMASコート剤は共有結合し安定しております。
    • 組織切片伸展作業を容易にする、親水性を有しております。
  4. MAS-GPコート・FRONTIERコート
    • MAS同等の切片剥離防止効果。
    • ファインフロストスライドグラスの使用により、High pHバッファ処理の耐久性が向上しました。
    • 免疫染色、特殊染色等におけるバックグラウンド共染を低減しました。
    • MASコートと同等の親水性を有しています。
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